「寒いところがね、こわいんだ」
「こわいん、ですか?」


は今まで自分の世界になかったものとであったときの表情をした。この無防備な表情、 僕はすきだなぁ。ふわり、と頭を撫でてやると、僕の手に従ってのまえがみの何本かが額の上 まであがった。


「そう。寒いってことはとても怖いことなんだよ。」


やわらかく諭してやると、は少しうつむいて、「ろしあさんにも怖いものがあったなんて、 なんだかふしぎ」と言った。新しいものを発見して、よろこんでいるときの表情。ああその顔、ほ んのりと赤く染まった頬もすきだな、なんておもった。暖かいところで幸せに育ったこの子には、 きっと僕の寒さへの恐怖なんて露程もわからないのだろう。憎い、という感情もあるけれどそれで よい、この子はあんな辛さなんて味わわないほうが良い、という感情もある。なんだか普通のこと を考えている自分が少しおもしろくて、更に愛しさは増した。


「朝起きたら昨日まで起きてた人が死んでるんだ。それはものすごい恐怖だよ」


は今度は恐怖だか哀れみだかわからない感情で顔を少しひきつらせて僕を見上げた。
恐怖、本当に恐怖。眠れない夜も怖いけれど眠すぎる夜も怖い。明日になったら自分は死んでいる かもしれない、隣の人間が死んでいるかもしれない。もしかしたら自分が死んでいるかもしれない のだ。そこは本当に生きるための戦い、だ。


「だから僕はあたたかいところへ行きたいんだ。ひまわりがいっぱいの、あったかいところ。」
「、わたしのいえ、あったかいですよ、!」


ぱっと顔を輝かせる。かわいい、かわいい、かわいい。








(くらしましょう、ずっとあたたかくてひまわりの咲き乱れるところで) (08.08.11)