「手ぇ、」
「は?」
「手、つないでほしい」












俺は思いっきり目を見開いた。もちろん自然にであって故意にではない。いつも無表情な の顔が、少し不機嫌そうに歪んでいて、少し視線を下へと向ければまっしろな細い腕 が俺に向かって差し出されている。俺はなにがなんだか理解できずに反応ができなくて、 それを見ていたの顔は更に不機嫌そうに顰められた。それに俺は驚いて、あ、ああと 搾り出すように返事をすると、そのちいさな手を持った。はそのまま俺の隣に歩いて 来て、それから何も言わずに止まった。小さいせいかなんだか隣に居るようないないよう な、気配がないような。




「・・・おっきい」
「!」




すごくびっくりした。なんでかっていうのは聞いちゃだめだ。絶対に駄目だ。
は少しうれしそうに微笑んでいた。頬もなんだかピンクほんのりとに染まっている気 がする。俺は腰が抜けそうになった。






確か付き合いはじめて二、三日後だった気がする。こいつは何を考えてるんだか連絡を入 れもせずに俺の家まで威風堂々をBGMにやってきて、驚いて玄関で迎えるとずかずかと俺の 部屋へと上がりこんだ。よかった昨日フランスに掃除してもらったばっかで、よかったエロ本とか 隠してて・・・とおもったはいいがは部屋についてしばらく立ったままきょろきょろと 周りを見回すと、飽きたのかどかっと座りこんで体育座りをしたまま動かなくなった。ち なみに俺はその時がお土産にと持ってきた紅茶と茶菓子(意外とこーゆーとこは律儀だ) を抱えて呆然とを見つめていた。とりあえずそのままこいつを部屋に放置したらエロ 本探しを始めるかもしれないああベッドの下今覗かれたら俺明日から外出られねェとか思った ものの茶も出さずに追い返すわけにもいかず、何もするなと言い残して茶を淹れに下へ降 りた。
茶を淹れながらはぁと溜め息をつく。あいつ男の部屋、しかもか、彼氏の部屋に来たって ことわかってるんだろうか。わかってねェだろうな。いろいろわかってないんじゃないか とおもう。そりゃ俺だってまだ、じ、実践とかしたことはないけれどいろいろ考えてしま うわけで、そりゃしたいとか思わないわけでもないわけなわけだけど。
もんもんと考えていたら茶がティーカップから溢れ出ていたもので俺は慌てて布巾でテー ブルを拭うと(あつかった)盆に載せるのも忘れてどたどたと階段を駆け上がった。それ からしばらくはこいつのもってきた茶菓子と俺の入れたミルクティーを二人でのんだりた べたりして(おいしい、と言われてしぬほどうれしかったのは誰にも言わねぇ)、ときど きがCDをみてこれあたしもすき、とか言うほかにはあまりなにも喋らなかった。少な くとも俺は二人の時間をどきどきどきどきしつつも楽しんで、それから幸せに感じていた りとかもしたわけだがが紅茶を飲み終えるのを見届けるなりどちらも手持ち無沙汰に なってしまった。
年頃のカップルが部屋で何するってそりゃもう俺としては一つしかないわけだがいくらな んでもそれは早すぎるような気がするし何より何も知らなさそうなこいつにへんなことし て嫌われたくない。そんなことを悶々と考えていたらまた体育座りに無言を決め込んだ がぼそり、と呟いた。
「若いカップルって皆おなじことをするのよね」
さもくだらない、というように。






とりあえずこいつは難しいのだ。お高いのだ。どうやったらそんなに不思議なかんじに仕 上がるのかってくらいこいつはお高く出来ている。そこらへんのあほうたちがやっている ことを私たちもするのみたいな、もうなにもかもくだらないみたいな、あなただけは私を失 望させないでみたいなそんな視線を喰らったら俺だって何していいのかわからない。期待 に答えられる自信なんてまったくない。それなのに、それだったのにこいつはいま自分か ら、




「・・・なんでそんな驚いてるの」
「い、いやべつに」




おまえが急にふつうの女子みたいなこと言うからだよばか、なんて言えなかった。言葉が 出なかったから。とりあえずはまた嬉しそうな顔をして歩き出した。俺は出遅れたが こいつの歩幅はなんかもう割りと小さいかんじなので俺がちょっと踏み出せばすぐに追い つく。の隣に並んで、歩調を緩めるとは上目遣いにこちらを見た。




「なんかね、なんで手汗とか気になるし放すタイミングとか難しいのにみんな手を繋ぎた がるのかとおもってたんだけど  なんでつなぎたくなるか、今わかったよ」
(ああどうしようこいつかわいすぎる!)







プラズマ
(08.08.31)