テレビが砂嵐になっている真っ暗な部屋で、一人でこうしているとなんだかドラマのようで笑えた。今日ギルと別れた。元から好きじゃないって言われてたし、私が無理矢理好きになるかもよ、なんてしつこく言ったからいつ別れなんて告げられても全くもって可笑しい状況でも私が文句を言えるような状況でもなかったのだけれど、それでもなんだか「捨てられた」って思うと、自分が無様で可哀相に思えてきた。私は「悪ィ、」そう言われて涙が溢れ出して、泣いちゃいけないってわかってるのに何度も何度もありがとうとごめんなさいを繰り返した。そんなことしたらばかでデリカシーないけど誰よりもやさしいアイツが気に病まない筈がないのに、あたしは本当に無様にしゃっくりあげながら何度も何度も謝罪と感謝を繰り返した。帰ってからもずっと泣いて、気づいたら外が真っ暗でとりあえずカーテン閉めてテレビつけて、やっと今気付いた。
なんだか泣きすぎて頭が重かった。鼻を思いっきり啜ってみたのだけれどなんだか成果もはかばかしくなくて、不満だけが残った。目の周りがすっかり乾いていてきもちわるい。ああそうだわたしごはんもたべてない。そう思ったらとてもおなかが空いてきて、でもそれ以上に疲れていたので私はとりあえずのろのろと体育座りから足を解いてソファーから降りた。
当然だけど台所も真っ暗で、冷蔵庫を開けてもこんな時に限って何もなかった。私は仕方なく四角に切ってあるよくあるチーズを軽く掴むとまた鼻を啜った。家はどこもかしこも真っ暗だったのにいつもみたいに怖くないのは恐怖よりも悲しみが勝ってこの暗すぎる部屋がわたしに優しいように感じるからだ。思えばあいつは私のことなんて最初から見てなかったのよね。それも付き合ったこと自体が私のエゴだったのだから仕方のないことなんだけど。あいつの目線の先にあるのはいつもエリザベータで、なんで私はいつもその隣に居るのにその目は向けられないのかとても悔しくて悲しくて、でもあいつも報われなくて。それでも私と二人で居るときはちゃんと彼氏やってくれてたしあたしのことみててくれてたんだよなぁと思うとまた視界がぼやけてきた。一通りぐすぐすした後鼻を掻くようにして抑えるとなんだかぐちゅ、という汚い音がして気持ち悪かった。
ソファーへと戻りながら、私とあいつはまた元の何もなかった頃に戻るのか、いや戻れないもっとよそよそしくなるんだと思ったら死にたくなった。なんであんなこと言ったんだろう。ばかじゃないのか、いやばかだ私。涙が枯れ果てたのか手はもう目を擦るだけで涙をぬぐってなどいなかった。ああ涙が枯れた、私はもう泣けなくなるみたいにあいつのことを好きじゃなくなって他の人を好きになってしまうんだろうかとおもったらなんだか自分が堪らなく汚い生き物のように感じられていっそ消えてしまえらいいのにと思った。目がとてもあつい。明日はきっと腫れて大変なことになるんだろうなぁ。明日私はあいつに会えるのだろうか。
あいつはあたしと付き合ってたとき何をおもっていたのだろう。わたしのことを何だとおもっていたのだろうか。つまらない女だと、図々しい女だとおもっていただろうか。そう思ったら最後にあいつが「嫌いじゃなかった」と言ったのを思い出して自分がまた最悪な奴に思えてきた。実際そうなのだけれど。何ひとつ共有できた想いも記憶もなかったのだろう。気持ちが同じじゃなかったのだから。
チーズをかじったらなんだか元気がでてきたようにおもえた。あんまり長い間じゃなかったけどそれなりに楽しかった。なんだかんだで優しくしてもらったし、あたしがいじわるでエリザベータにあたしたち付き合ってるんだよって言いそうになったときもちょっと青くなってあわあわしてただけでべつにあたしにはなにもしなかった。あのときのあたしいろんな意味でとてもブスだったろうに。いつも許してくれるのはあたしじゃなくてギルだったんだ。こんどは悲しさじゃなくて申し訳なさで涙が出た。涙って枯れ果てない。ふとケータイを見るとケータイはチカチカと青い光を放っていた。メールがきてるなんて少しも気づかなかった。いつからだろう、ずっと待たせていたんじゃないだろうか。でも私は見るのが怖くて、もしエリザベータだったらどう接していいかわからないし、ギルだったらなんて用件なのかすごく怖いし、他の人なら他の人でまたきっと私は失望したりしらけたりするのだろう。ああ、ああ、
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