私が上半身を起こすのに応じてシーツのこすれあう音がとても耳障りに響いた。私はなるべく音をたてないほうがいいと思ったのだけれど少しの間だったので許してほしい。体もだるいが精神的にとてもとろんとしているし、だるい。




カーテンの間から日の光が差し込んでいる。まぶしくもないしあたたかくてむしろ好きなのだけれど、今日このような気分のときはなんだか置いていかれているような、なんだか私だけがとても醜くて不浄なもののような気がしてすきではない。なんだか僻みや負け惜しみに似たこの感情もすきではない。私はふぅと大きく息を吐き出して、なんだかこの場違いに大きくて広くて豪華な部屋に、これまた大きくて綺麗で、だけどセンスのいいベッドはけれどあまりにも物がないおかげでこれでは海に浮かぶ孤島のようだと思った。誰もいない海に浮かぶベッド。あまり開けてない瞼の間からあの人を見るべく自分の斜め下へと視線を移す。とても安らかな顔で眠っているなぁ、あたしがどんな思いをしているかなんて知らないで。私は自己陶酔だか悲劇のヒロインごっこだか、なんと言えばいいのかわからないけど自分の心の中だけで自分を美化するようなことをしている自分がとても嫌だった。とても醜いなぁと思った。




私は下に散らばっている自分の衣服に目を落として、一瞬着ようかと身動ぎしてやっぱり面倒だとそのまま動かなくなった。また隣のあの人に目を落とす。とても、愛しそうにわたしに触れたのだ。普段は笑顔でわざと馬鹿な振りをしている、この人はいつもふと冷たいと感じる。きっと心の中は冷たくて誰にも見せられないと、誰にも負けられないと思っているのだ。そんな人が私にだけ心を開いて、私だけを愛してくれて、あたしだけに優しくさわってくれたんだとしたら、あたしはこの人に全てをゆだねたいとおもった。幸せそうな寝顔に愛しさが込み上げてくる。かわ、いい。もうなんだか愛しすぎるせいなのかそれとも自分が悲しいのか私は喉が締め付けられるように痛くなって、目尻がじわりと熱を持ち始めたのがわかった。それから視界がなんだか浮き上がってぼやける。ああだめださすがにこれはだめだ。慌ててアルフレッドから目を逸らして天井を仰ぐ。ひくっと喉が鳴って、ふぅと息を吐き出すとなんだか少し落ち着きを取り戻せた気がした。記憶が勝手に浮かび上がってくる。陶器だかなんだかを触るような手つきで私の肌にふれたこと、その手がとても暖かかったこと、苦しそうにあたしのなまえ、「」、って呼んだこと、一瞬だけ見えた今にも泣き出しそうな表情、愛しさや慈しみが溢れる声。そんなものが昨日の夜すべてわたしに、わたしだけに向けられていたんだと思うと私はなんだか申し訳なくなってきて、誰にすればいいのかは検討もつかなかったけどとても縋りついて謝りたくなった。ごめんなさいごめんなさい。あたしはそんなことが許されるようなおんなじゃないんです。




私はまた上を向いて鼻を啜った。ベッドのすぐ脇、私の手を伸ばせば届く距離にあったバッグのチャックを開けると黒光りする銃が出てきた。私は冷たく冷えた其れを構える。冷え切った銃の温度が、アルフレッドが目を開けたら注がれるであろう視線の温度を連想させて、私はまた引き金を引けない。












裏切りの準備が進まない




(08.10.19)(マフィアパロ企画Brunoさまへ提出 ういさま、粧さまありがとうございました)