はからだと同じくらいの大きさなんじゃないかと思うくらいの、黒光りするマシンガンを、まるでそれが自分を守ってくれる絶対のものだと信じているように、体全体で抱きかかえていた。引き金には指をかけたままで。息も髪も乱れ顔は煤や砂で真っ黒になっている。「あなた」「、」僕はの隣にしゃがんだ。はとても疲れているようだった。「いまは革命でみんな気が立ってるから危ないって知ってたでしょ?」「・・・もう遅いもの」彼女は急に拗ねたような顔をした。「今日で何も口にしてないのは何日め?」「・・・私きっとそろそろ死ぬ」の頬はこけていた。僕もはもうそろそろ死ぬとおもうなぁ、と言った。そうしたらはなんだか安らかに笑って何も言わなくなった。少し伏目がちだったからほんとに死んでしまったのかとおもったけどの頬はまだ赤みがひかなかったので、まだ生きているんだとおもった。いまこの路地から外に出たりなんかしたらきっと僕もこのこもただではすまないだろうということが周囲の騒音で判った。過激な思想家はきっと自分の口を噤もうとしないし人の意見も聞こうとはしないだろう。それに煽られる群集も、きっと。「またなにか強気なことを言ったんだね」「べつに」僕はすこしため息をつきたくなった。彼女の気の強さと無鉄砲さは、さすがの僕にも手に負えない。は薄着だった。確実に冬は近づいていた。このこは餓えで死ぬのが早いだろうか、それとも寒さで凍え死んでしまうのが早いだろうか。どちらにしろ僕はこのこを助ける気がないのだという自分には気づかない振りをした。「、ぼくの中で、きみは幸せだった?」僕の声にしてはなんだか物悲しくて、寂しいものがあった。こんな混沌とした時代の、ぼくのところにうまれてきて。「うん」到底普通なら返ってくることを期待できない、でも僕が求めていた返事だった。「パンの一つもろくに食べられないのに?」「うん」「寒くて寒くて人が死んじゃうのに?」「うん」このこは、馬鹿だとおもった。それでもぼくはきっと僕の国民全員が僕のことを非難してもこのこが肯定してくれるならそれでいいとも思った。パンがなくても寒くても、みんな仲良くできなくても、が幸せだったというのなら僕はそれで満足だった。このこはとても辛い思いだってして、裏切られたことだって数え切れないのにどうして本当の苦しみを味わったことの無い、あたたかい家庭のなかでだいじにだいじに育てられてきたばかな娘のように一生懸命この世界を愛せるんだろうと不思議に思う。せめてこのこみたいなこがパンを満足に食べられるようになれればいいな、と僕はなんとなく思った。「、好きだよ」(すきですきでたまらないのに何故か僕は君を救おうとしないんだ)(09.01.13)