英国さんから花の種を頂いた。私があの方から貰ったものといえば薔薇の花束や紅茶などの消耗品ばかりだったから、この花だっていつかは枯れてしまうけど花束よりはずっと長く保つし種をまた育てれば物を保存するのと気持ちはあまり変わらないし、とにかくこんな変な言い訳をぐるぐる考えてしまう程嬉しかった。余りに嬉しかったので私はアンティーク用のかわいい植木鉢を新しく買ってきて植えた。
当たり前だけれどなかなか芽はでなくて、私は暇さえあれば植木鉢の前に座って眺めた。話し掛けたりもしてみた。今日はいい天気だとか英国さんに以前頂いた紅茶を煎れてみたとかお隣さんから噂話を聞いたとか。
この花は、私のできる限界まで大切にして綺麗に咲かせようと思った。忙しくてたまにしか遊びにいらっしゃらないあの方に、綺麗に咲いたんです、大事に育てましたと笑って言う姿を何度も想像した。きっとはにかむように、でも少し照れくさそうに笑って頭を撫でてくださるだろう。私はそれが待ち遠しくて待ち遠しくて仕方なかった。




しばらくすると芽が出てきた。青々した、綺麗な、儚い、でも生命力に満ちた、強い芽だった。
今度はそれがまた伸びてゆくのが楽しみで、私はたくさん水をやって、たくさん日に当てた。あまりに愛を注いだせいで、芽は枯れてしまった。土の上に吸い取りきれなかった水が溜まっていて、そこに身を横たえて、黒くなっていた。
私はどうしたら良いかわからなくて、悲しくて、どうしようもなく悲しくてそのまま泣くでもなく立ち尽くしていた。
暫くそうしていると来客を告げる鐘が鳴った。けれども私は悲しくて出る気にもなれなかったので心の中でお客さんにごめんなさい、と謝った。すると、戸口の開く音がして私を呼ぶ声が聞こえた。
その声が英国さんのものだと気付く頃には声の主は私の居る部屋の戸を開けていた。
私が振り向くと英国さんは「あ、あの、居る気配はするのになんかあったのか、心配になってだな、あの、」と言った。私はそんなことどうでもよくて、両手で持っていた植木鉢といっしょに振り向いて、「私、大事にしてたんですが、水の、遣りすぎで、」と言った。続けようとしたけれど、喉を締めるような感覚とそれに伴う熱のせいでかなわなかった。私の意思を無理して顔は歪むし視界もぼやけてきた。ああ私そんなに悲しかったのかとぼんやりと思った。
こんなことで泣いて欝陶しがられたりしたらどうしようと思ったと同時に体が変に引っ張られてなんだか暖かくなったと思ったら英国さんの欧州の男の人にしては細いスーツの肩が目に映った。私はなんだかものすごく恥ずかしくて、あのっ、と、無意識に上ずった声を上げていた。


「うわ、わ、悪い」


英国さんはぱっと私から身を放すと植木鉢を覗き込まれた。まだ耳が赤くなっている。ああこの人も恥ずかしかったのかなと思った。欧州ではハグは挨拶だというのに。


「あのな、またその気があるならまた種とかいろいろ持ってくるし、その、・・・」


ぱっと身をまた起こしたかとおもうと真っ赤だった耳が顔まで赤くなっていた。英国さんは照れたようにあー、とかを繰り返している。いつもは私のほうが余裕がないのに、なんだかおかしかった。


「一緒に、育てるとか・・・」








ささやかな春の日の


(それはプロポーズですか英国さん)
(え?いやっ違っ・・・・・・いや、違わなくもないってことにしてやる!)
(・・・ふふ、お請けします)
(ええ!!!??)





(夜眠れなくて音楽聴いてたら書かなきゃいけない気がして書いたもの やっぱり衝動で書くとろくなことがないですねにこ!ありきたりサーセン/(^0^)\)(09.04.01)