「ポンペイって君のところにあったんだね」
はぺらり、と本をめくりながら言った。俺に話しかけるような言い方だけどほんとは俺の答えなんか求めてはいないのが雰囲気やその後の行動の節々で分かる。この人はこういう人だ。つかみ所のない雲みたいに、気まぐれに俺のところへ来てはまたふらりとどこにでも行ってしまう。比喩であり比喩でない。そして俺にはいつもから回る期待や空しさが残るのだった。




「弟君のところかと思ってた」




の長いまつ毛がぱちぱち瞬いた。斜め後ろという角度から見るとそれはとても可愛く見えた。きっとこの人は俺の気持ちになんてとっくに気づいているし、俺がこの人の素振りで期待してしまうことやその他いろんな、俺でさえ気づいていないようなことさえも知っているのだろう。その涼しい目で分析するわけでもないのに全てを見透かしているのだ。じゃあ一体俺はあんたの何なんだよ。きっと尋ねても答えてはくれない。




「噴火のとき君はどこに居たの?」 「・・・そのときはまだじいちゃんの時代だった」 「あ、そうかごめんね」




この人はいつだって俺なんか見ちゃいない。かといって別にじいちゃんを見ているわけでもないらしい。この人は俺が生まれるずっと前から生きていると聞いた。じいちゃんより前に生まれたのかは知らないがなんか昔結構ひどいことをしたとかなんとか言ってたような気がする。その罪滅ぼしのためにこんなふうになっているんだとしたらそれはすっごい偽善だし、俺にとってこれほど迷惑なことはなかった。大体それで何がどうこうなるわけでもないし、自己満足以外のなにものでもない。




「いつかは行ってみたいとおもってたんだよここ」




笑うでもなくへらへらしている。一番許せないのはこんな人のことを思い続けてる自分だ。さっさとそこらへんの女の子ナンパしたほうが絶対に楽しいに決まっているのに。




「・・・いつだって来ればいいだろ」 「ん、」
「それで、いつまでも居ればいい。・・・帰らなきゃいい。」 「・・・うん。」









時のオルゴール
(ありがとう。)

















(小さい頃からポンペイが好きで好きで)(08.04.04)