「Hello!やぁ!久しぶりだね!」
顔を輝かせてあがりこんでくるアルフレッドを見たら、連絡もなしに家まで訪ねてきたことに小言を言うこともできなくなった。
「三日ぶりじゃ久しくもなんともないわよ」
くすくすと笑って言うと、三日だって俺にとっては長いんだよ、と頬を膨らます。ああかわいい。リビングまでの短い廊下を、靴を脱いでいるアルに背を向けて歩きながら「何か食べる?あんまり何もないけど」と聞くと、「カレー!カレーがいいな!」と元気のいい返事が返ってくる。
私は新米だけど一応社会人で、アルフレッドは大学生だ。気軽に日本に来ては留学だの遊びにきただのと言って、私のところや本田くんのところに出現する。
初めて会ったのは大学のキャンパスで、留学してきたのだという彼と、後輩の本田君にすれ違って一目惚れされたという漫画や二流映画にありそうな関係だ。もちろん私もこのかわいい後輩に不快感を示すことなく、むしろ喜んで相手をしているわけだ。
「いやぁ、カレーは素晴らしいよ。あんなに茶色くてどろどろしてるのにあんなにうまいなんて!俺の国にももっと専門店ができるといいのに」
何をつくってもアルフレッドは喜んで食べてくれる。あまり味を気にしない国から来ているからというのを差し引いても気分はとてもいい。そのせいで、最初はこ食費の捻出に喘いでいるであろう大学生にたまに恵んであげるという感じだったのが、今ではうまいと言わせるためだけにつくっているような感じになっていた。
毎回ほんとに美味しそうに食べるアルフレッドを見ていると、料理はあっという間にアルの口の中に消えていく。それから一息ついたアルが、お皿を洗っている私の背に向かって、「ああ美味しかった、こんなにおいしいものはマクドナルドとドーナツくらいだよ。、結婚してくれよー」と言うのだ。そして私は、いつかそうなる日がくるのかもしれない、と思いながら泡を水で流すのだった。
「今日は、本気だよ」
「え?」
「あ、いや、いつも本気だけど」
いつもの応酬に、異端分子が入ったせいで、私のお皿を持った手がぴたりと止まった。振り向くと、照れてあたふたしているアルがいた。
「俺はまだ大学生だけどもう指輪はちゃんと買ったし、仕事だってもう決まったし、卒業するのももうすぐだし」
「・・・今日の夜、ドレスアップしてくれよ。迎えに行くから。それで、フランス料理でも食べて、指輪渡すから」
「・・・じゃあ、また」
年下の彼氏。
(や、やられた・・・!)(断れるわけないじゃない!)
(10.05.23)